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石川スローツーリズム 時をいただく贅沢 リポート

能登半島の美食を生み出す若手生産者とシェフ

ゲストをもてなすために集まった生産者たち。左から「ひらみゆき農園」平美由記さん、「上田農園」上田拓郎さん、「陽菜実(ひなみ)園」柳田尚利さん、「能登風土」酒井光博さん。彼らにとっても、食べ手の感想を直接聞くことができた貴重な夜となった。

羽田空港からわずか1時間、白銀の能登半島に着く。今年は雪が少ないといわれていたがそれでも田畑や、民家は純白におおわれ静寂を漂わせる。日本の農村の原風景だ。

石川県に位置する能登半島は三方を海に囲まれ、平野が少ない環境から斜面に棚田が広がり、背後には山林という豊かな空間。開発があまり入らなかったこともあり、今も昔ながらの風景と伝承が守られている。その貴重さからイタリアに本部を置くFAO(国際連合食糧農業機関)により、2011年に「能登の里山里海」が日本初の世界農業遺産に認定された。(注1)この能登半島を現在、変えているのが地元に根を張る若き生産者たちと美食を生み出す才能を持ったシェフたちだ。

(注1)新潟県佐渡市「トキと共生する佐渡の里山」も同時に認定。

「L’Atelier de NOTO」池端隼也。輪島生まれ。仏ミシュラン星付きレストランなどを経て「地方(故郷)で店をやることの意義」を感じ2014年同店をオープン。東京からわざわざ食べに来る客が増えるなど、能登の魅力を引き上げたひとり。

「MALGA GERATO」柴野大造。能登町生まれ。類まれな感性を生かした画期的なフレーバーで2016年に世界ジェラート大使(日本人初殿堂入り)、2017年には「Sherbeth Festival」総合優勝。アジア人初の世界チャンピオンに。能登を基点にガストロノミージェラートを世界に発信。

「Villa della Pace」平田明珠。東京生まれ。各種イタリアンレストランで経験を重ねた後、2016年七尾市に同店をオープン。「能登だからできること、作れる料理」を日々研鑽。若手料理人コンペティションRED U-35シルバーエッグ受賞、2018年、バリラ・パスタ・ワールドチャンピオンシップ日本代表。

仕込みの真っ最中にもかかわらず、日本酒を自ら届けてくれたのが「白菊」ブランドで知られる輪島の「白藤酒造店」9代目・白藤喜一さん。今回の料理にあわせた選りすぐりの美酒はゲストも絶賛。

若手シェフと「世界ジェラート大使」の共演

世界デザート大使・柴野氏によるガストロノミージェラートの斬新なおいしさと、料理との組み合わせによるポテンシャルにも注目した一夜でもあった。

今年2月、石川県と奥能登中央地区スローツーリズム・ネットワーク、能登島ペスカグリ・ネットワークによる「時をいただく贅沢 石川スローツーリズム」と題したガストロノミー&食体験ツアーが行われた。そのハイライトが、能登を代表するシェフ「L’Atelier de NOTO」の池端隼也氏と「Villa della Pace」の平田明珠氏による一夜限りのコラボレーションディナーだった。二人は一月に開催された東京・銀座「エスキス」のリオネル・べカ氏とのイベントにも参加、その実力を一躍、知らしめている。また、ガストロノミージェラートを提唱する「世界ジェラート大使」である能登町出身の「MALGA GELATO」の柴野大造氏も2人のシェフと共演。能登の食材を使ったイノベーティブなジェラートを各料理に添え、その斬新さでゲストたちを魅了した。

能登の冬を彩る食材がずらり!

タラ、カニ、牡蠣など、コースには冬の能登ならではの食材が惜しげもなく使われた。さらに能登牛や「のと115」の名前で呼ばれる最高級原木しいたけや、栗、ブルーベリー、カリフラワーなどなど、「能登ブランド」の食材が加わる。その多くは、若手生産者たちがていねいに愛情を注いで生み出した最高品質のもの。会場となった「L’Atelier de NOTO」にはそんな生産者たちがゲストをもてなすために集まる、というサプライズがあり、「食談」という形で料理を味わいながら話を伺った。自分たちの育てる食材への愛情とこだわり。取り組むものは異なるが、そこに通底するのは能登の風土と恵みへのリスペクトだ。

・ブランド豚「能登豚」を使ったアミューズ。添えたのは「MALGA GELATO」のマスタードジェラート。 ・「上田農園」の芽キャベツ、網元「日の出大敷」の定置網漁業で水揚げされたカワハギ、女性オーナーによるオーガニックな大粒で味が濃い「ひらみゆき農園」のブルーベリーを使った一皿

・驚くほどのコクと甘さでゲストをうならせた栗のニョッキ。低温熟成を経て生まれる糖度30度超えの「松尾栗園」の能登栗を使用。 ・たっぷりと脂ののったタラと七面鳥にはさわやかに上田農園のフダンソウとロマネスコをまとわせて。

・池端シェフがゲストの目の前で自ら切り分けた「能登牛」の岩塩包み。海水をくみ上げて職人たちの手作業で作られる天然塩も能登の優良生産品のひとつ。 ・あわびのリゾット。米と海産物という「里山里海」を標榜する能登を象徴する一品で締めくくられた。

生産者とシェフの理想的環境

料理を味わいながら感じたのは、シェフと生産者との距離感だった。目の前には海、ふりむけば田畑や山林が広がる能登では、生産者との距離が近い。シェフたちが何を望んでいるのか。また、生産者がどのような思いで作っているのか。互いが理解しあえる関係性が強固になる。能登にはそのつながりがすでに生まれていると実感した。今回はトライアルのようなツアーだったが、ぜひこれからも開催を継続してほしいと願っている。

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更新: 2019年3月12日

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