シリル・ブラン × 手塚良則 シャンパーニュと鮨の出会い

秋の気配が濃くなってきた10月初旬、シャンパーニュの大物醸造家シリル・ブラン氏が来日。真のシャンパーニュラバーが愛して止まない、シャルル・エドシックの最高醸造責任者を2015年より務めるブラン氏。自ら手がけるシャンパーニュと鮨との最高のマリアージュを探して、FOODPORT.で「鮨の心」を連載中の「松乃鮨」の手塚良則氏を訪ねた。

世界の王侯貴族とセレブに愛飲されてきたシャンパーニュ

シャルル・エドシックは、1851年にシャルル=カミーユ・エドシックによって創立されたメゾン。類い稀なカリスマ性を持ったシャルルはアメリカに渡り、当時の社交界で“シャンパーニュ・チャーリー”というニックネームがつくほどの 人気を得て、ビジネスでも大成功を収めた。ヨーロッパでもロシア、スウェーデン、オランダ、スぺイン、オーストリア等の王室で愛飲されるブランドとなり、特に英国王室との関わりは深かった。シャルル・エドシックはエドワード7世の御用達シャンパーニュとなり、エリザベス2世在位25周年の際には記念限定ワインが造られた。さらに、チャールズ皇太子と故ダイアナ妃のウエディングの際には、1973年ヴィンテージのロイヤル・ウエディング・キュヴェがサーブされている。

偉大なメゾンの受け継がれるDNA

この輝かしい栄光を誇るシャルル・エドシックの最高醸造責任者、シリル・ブラン氏の突出した才能は、醸造のみでなく、シャンパーニュと料理のマリアージュにも見ることができる。それは、シャンパーニュの栽培および醸造を代々行ってきたファミリーの3代目として、当然の資質と思われがちだ。しかし、熱い飲み物と食べ物のほか、コーヒーや強いスパイスを控えるといった彼の日々のストイックな努力が、並外れた嗅覚と味覚を築くのに重要な役割を果たしているのも事実。 ブラン氏が正確に香りを嗅ぎ当て、風味を描写していく能力は 超人的だ。

「鮨の心」を受け継ぐ鮨職人との出会い

このように繊細なノーズと舌を持つブラン氏は、実は大の和食好き。今回の来日中には、 シャルル・エドシックと最高の相性を見せるネタを探すべく、「松乃鮨」のご主人・手塚良則氏とタッグを組んだ。手塚氏は「松乃鮨」の4代目として生まれ、幼少時から魚の仕入れに同行するなど鮨のエリート教育を受けて育った。留学やプロスキーガイドとして、ヨーロッパや北米で計4年間の滞在を経て、インターナショナルシーンで活躍できる能力も磨いている。現在では、 東京の自分の店だけでなく、世界を股にかけて活躍する鮨職人で、世界のセレブやVIPから要請を受け、彼らの自宅やプライベートジェットで鮨を握る、まさにフライング鮨マスターなのである。

ブリュットレゼルヴに合うネタは?

彼らのマリアージュに選ばれたのは、ブリュットレゼルヴとブラン・デ・ミレネール 2004年の2種類。「マリアージュには二通りあります。似た者通しの組み合わせか、コントラストを見せるものかどちらかです」とブラン氏。個人的にはコントラストのマリアージュがお好みとのこと。

最初にトライしたのは、ブリュットレゼルヴ。リザーヴワインが40パーセント使用されており、しかもそのリザーヴワインの平均熟成年齢は10年という、並々ならぬこだわりだ。バックラベルを見ると、デゴルジュマンだけでなく、セラーに入った年も表記されている。シャルル・エドシックは、このセラー入庫表示を最初に行ったシャンパーニュメゾンだ。現在流通しているボトルは、2009年にセラーに入っているので、平均10歳というリザーヴワインの年齢を考えると、前世紀のワインがボトルの中に入っていることがわかる。

さらに瓶熟も約4年と、長い期間澱と接触しているため旨みに富み、手塚氏が「様々な風味がありますね」と言うように、多層の複雑な風味が特徴だ。ノンヴィンテージではあるが、限りなくヴィンテージ  シャンパーニュに近い風味を持つ、ゴージャスな泡だ。

この熟成感に富むブリュットレゼルヴに合わせるためにブラン氏がリクエストしたネタは、イカとタコ。実際に両者を食した結果、タコがより合うと判断。「タコの噛み応えのある食感は、コントラストのマリアージュを作り出しますね」と、ブラン氏。三浦半島佐島産のタコは 塩でマッサージし、綺麗な色を出すために日本茶で1〜2分茹であげる。手塚氏はタコに千葉産の塩をのせ、 さらにスダチを搾りかけることを提案。 熱を入れることによってより旨みが強くなったタコに、マリアージュにおけるブリッジの役割を果たすスダチを一滴のみ搾りかけた。澱との接触期間が長く、旨みをきれいに表現するブリュットレゼルヴに、タコは最高の相性を見せるネタだ った。

繊細な職人技とシャルル・エドシックとの融合

わさびについては、頭の部分と尻尾の部分で辛味が異なることを手塚氏から教わった。「頭の部分は、マイルドだからシャンパーニュの邪魔はしないね」とブラン氏。手塚氏は、わさびの頭と尻尾をブレンドし、ネタに最適な風味をクリエイトしていく。あたかもシャンパーニュと料理のマリアージュのように、鮨という世界の中でネタとワサビを融和させ、さらにワインとのマリアージュを考え、塩、薬味などで微調整していく手塚氏。彼の鮨の世界とブラン氏のシャンパーニュの世界が融和して行く美しい瞬間……。

ブラン氏が二番目に気に入ったネタは、手塚氏オススメのヒラメ。手塚氏は、折しも豊洲市場オープン当日に仕入れたものと、築地市場で仕入れた3日目のものを握って見せてくれた。手塚氏によると、ヒラメの熟成に関しては人により好みが異なるそうだが、ブラン氏は迷わず3日目の熟成した方をチョイス。

当日仕入れたものは肉質が硬く、風味に高さがあり、シャープな印象だ。それに対し、3日目の方は軟らかく、イノシン酸などの旨みが顕著で、より横に広がる豊かな風味を持ち、ブリュットレゼルヴの組成と風味に類似している。ヒラメに関しては、明らかに似たもの通しのマリアージュだった。

初対面にも関わらず、阿吽の呼吸で完璧なマリアージュを作り出していったブラン氏と手塚氏。超人的な嗅覚と味覚を持つブラン氏が、終始満面の笑みを見せていた。フライング鮨マスター、手塚氏の鮨を味わいと一緒に作り出していったマリアージュに満足そうに頷きながら。

次回は、シャルル・エドシックのブラン・ド・ブランの最高峰であり、83年の初ヴィンテージ以来、5回しか造られていないブラン・デ・ミレネールが登場。豪華なネタとエキサイティングなマリアージュに、乞うご期待!

60のクリュから厳選された、シャルドネ、ピノ・ノワール、ムニエを均等にブレンド。平均10年熟成のリザーヴワインを40%使用することからくる、他に追随を許さない熟成感が特徴。ノンヴィンテージでありながら、限りなくヴィンテージシャンパーニュに近いゴージャスな風味は、シャンパーニュ愛好家の心を掴んで離さない。750ml 8,000円(税別)

【シャルル・エドシックに関するお問い合わせ】
日本リカー
TEL:03-5643-9770
URL:http://www.nlwine.com/winery/charlesheidsieck/

松乃鮨マツノズシ

松乃鮨

住所:
東京都品川区南大井3-31-14
TEL:
03-3761-5622
営業時間:
昼11:30~13:30(L.O.)  夜16:30~22:00(L.O.)
定休日:
日曜・祝日
URL:
http://matsunozushi.com/

写真・広瀬美佳 文・ウィラハン麻未

更新: 2018年11月20日

この記事が気に入ったら
「シェア」しよう

最後までお読みいただき、ありがとうございます

pagetop