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食のプロが訪れた島根県石見 後編~地域の魅力を総合力で発信

石見と書いて「いわみ」。島根県西部地方の名称で、鉱山遺跡としてアジア初の世界遺産に指定された石見銀山でも有名です。北は日本海、南は中国山地に面し、海の幸・山の幸が一年を通して豊富なこの地を、「細小魚」店主・大貫淳一さん、「ななかぐら」オーナーシェフ・内田奈々さんと「青山16℃」店主・天田賢二さんが訪れました。石見の食を巡る旅を前編に引き続きレポートします。

地域と共に生き続けた醤油蔵の100年木桶

3代目の垣崎正紀さんと4代目の宏次さん。親子で100年続く醤油を醸す。

昭和30年代には全国に約3万軒はあった醤油醸造元ですが、平成28年には1200軒ほどにまで激減してしまいました。そんな状況の中、島根県のほぼ真ん中に位置する邑南町(おおなんちょう)で、創業大正10年の垣崎醤油店は、昔と変わることなく醤油を造り続けています。

垣崎醤油店での必見は、創業初期から使われている大きな木桶です。うっすらと光が差し込む本蔵の中、100年の月日のうちに醤油が沁み込んだ木桶の美しさに、思わず惚れ惚れ。

3人は、3代目の垣崎正紀さんに誘われて木の梯子で木桶の上へ。仕込み中の醤油を長い竿でかき混ぜます。思いのほか深い樽の中、ふつふつと息をする“醤油の赤ちゃん”には、愛おしさすら覚えます。

垣崎さんは、「木桶を使う醤油屋の数は減少の一途ですが、うちでは創業当時からの木桶を大切に、ていねいに醤油づくりを続けていきたいと思います」と、にこやかに微笑みます。ちょうどそこに、4代目の垣崎宏次さんが帰宅。令和の醤油蔵を守っていく親子がそろい、内田さんたちと記念撮影へ。まるで福の神のような笑顔の宏次さんが、その場を朗らかに包み込みました。

・正紀さんに手ほどきを受けて、醤油をかき混ぜる大貫さん。・魂を込めて醸造する、そんな意味が込められた濃口醤油「醸魂」。

垣崎醤油店
住所:島根県邑智郡邑南町中野1046
TEL:0855-95-0321
http://www.kakizaki-s.com

石見が誇るブランド牛「石見和牛肉」、ブランド豚「まる姫ポーク」

垣崎醤油店を後にして一行が向かったのは、同じく邑南町内にあるJA島根おおち地区本部。ここでの目的は、石見の稀少なブランド牛・石見和牛の見学です。

「石見和牛肉」と名乗れるのは、選び抜かれた黒毛和牛の中でも未経産の雌牛の肉のみ。「舌の上でとろける融点の低い脂、やわらかい極上の旨みが特徴です」と、畜産課長の品川克弘さん。美しい自然と水、高原地という恵まれた環境で飼育しており、年間で200頭限定という稀少性も、その価値を高めています。

稀少な石見和牛を肥育している品川克弘さん。

そんな「石見和牛肉」を試食しようと、見学後はドライブステーション「神楽の里 舞乃市」へ。ここは、食事や買い物はもちろんのこと、休憩処やシャワー、ガソリンスタンドなど、島根県内の車での移動をサポートする便利な施設。「神楽の里 舞乃市」を運営する浅利観光の常務取締役・植田智之さんが、「石見和牛肉」に加えて、島根県のブランド豚「江津まる姫ポーク」も用意して待っていてくれました。

「箸で切れるやわらかさには驚きますね」と、「石見和牛肉」を一口食べて、天田さん。塩胡椒だけでも十分美味しくいただけます。

日本人の口に合うようにと、独自に育種改良したハイブリッド豚の「まる姫ポーク」も、ジューシーかつほのかな甘みがあり、シンプルに焼くだけで十分。良質な雌豚のみを選別した肉はうま味が凝縮され、きめ細かくやわらかな甘さを感じる脂身が特長です。

こうしたブランド肉に加えて地元の魚介類や野菜、加工品を、飲食店から注文を受けて一括で納品する、いわば“地域の商社”的な役割を、浅利観光は担っています。このサービスは、送料が負担となる個人経営の飲食店に、特に好評とのこと。

「あちこちから気に入った食材を仕入れていると、送料がバカになりません。浅利観光さんのような“地域の商社”があるのはとても便利ですね」と、内田さん。こうしたありそうでなかった取り組みが、島根県の食の魅力を全国に伝える強力なパワーとなるに違いありません。

「神楽の里 舞乃市」にて試食。”地域の商社”を実践する浅利観光の植田智之さん。

JAしまね島根おおち地区本部
住所:島根県邑智郡邑南町中野3457-5
TEL:0855-95-0152
http://ja-shimane.jp/

神楽の里 舞乃市
住所:島根県江津市後地町3348-113
TEL:0855-55-1155
http://www.asari-g.jp/mainoichi/

島根の食に魅了されて、東京からIターン 「ボクらの町のカレー屋さん」の佐藤さん

石州瓦になまこ壁、数寄屋造りの「道の駅 瑞穂」にある「ボクらの町のカレー屋さん」。

2日目のランチに訪れた邑南町の道の駅「瑞穂」。地元の農家が作った野菜や肉、加工品などの販売所の隣に、「ボクらの町のカレー屋さん」があります。手がけたのは、邑南町にある「里山イタリアン AJIKURA」の代表・佐藤聡さんです。

佐藤さんは埼玉育ち。かつては東京・銀座のイタリアンで働いていた経験の持ち主ですが、縁があって5年前に奥様と子供たちと一緒に邑南町に移住。2014年に起業して、「里山イタリアン AJIKURA」の運営をスタートしました。今では広島市にも店舗を構え、精力的に邑南町の食の魅力を発信しています。

「ボクらの町のカレー屋さん」は、今年オープンしたばかり。「邑南町の特産品を作りたい」という多くの町民の声がやっと形になりました。特産の石見ポークを具に、昔ながらの亀谷味噌を隠し味に使っています。亀谷味噌は邑南町瑞穂地域の方々が、毎年地元の大豆で作る数量限定の貴重な長期熟成味噌です。お店にはひっきりなしに地元の人たちが訪れ、カレーとともに佐藤さんとの会話を楽しんでいました。すっかり地元に溶け込み、人々から愛されているようです。

ところで「里山イタリアン AJIKURA」のランチの客単価は、なんと約4000円。広島など町外から、遠くは東京からもお客様が訪れるとのこと。「食」という魅力的なコンテンツがあれば、地方でも十分勝負ができることを実践する佐藤さんは、邑南町の強力なPR大使でもありました。

邑南町にIターンした佐藤さん。イタリアン、カレー店など、地元の食材を使った飲食店を営んでいる。

「ボクらの町のカレー屋さん」
住所:島根県邑智郡邑南町下田所260-3 道の駅「瑞穂」内
TEL:080-4355-0572
http://urx2.nu/Nvdr

「里山イタリアン AJIKURA」
住所:島根県邑智郡邑南町矢上3123-4
TEL:0855-95-2093
http://si-ajikura.com/

“魔法の手”を持つ魚のプロの秘技を見る!

アジの脂の乗り具合を手で測った後に、器械で改めて確認する渡邉さん。

ツアーの締めくくりは、早朝5時に「山陰浜田港」へ。

「山陰浜田港」は、県内随一の水揚げを誇る漁港。ここで水揚げされるすべての魚を、「山陰浜田港」ブランドとして全国に出荷しています。なかでも力を入れているのが「どんちっち」と銘打ったアジとカレイ、ノドグロです。漁獲時期、サイズ、脂質含有量などで定められた規格を満たしたものだけが、どんちっちブランドのシールを貼ることが許されます。

この日はあいにく台風接近中で水揚げはわずか。そんな中でも、選りすぐりの「どんちっちアジ」がシェフたちの元へ。浜田市水産物ブランド化戦略会議専門部会長、渡邉祐二さんが、どんちっちブランドについて説明をしてくれました。

渡邉さんは、アジを触っただけで脂質含有量を言い当ててしまうと、地元では評判の人。専門の計器で測る前にさっとアジの尾に近い下腹を触って、「これは10.5パーセント、こっちは9パーセントかな」。実際に計測してみると、ほぼ渡邉さんの見立てどおり。まさに“魔法の手”の技に、大貫さんも脱帽の様子。

ところで「どんちっち」とは?

それは、漁港のある浜田市に昔から伝わる郷土芸能「石見神楽」のお囃子の音が、「どんちっち」と聞こえることから生まれた幼児言葉。老若男女、すべての地元の人に親しまれる言葉「どんちっち」は、その意味を知らない人にもどこか親しみを感じさせる響きです。

どんちっちブランド以外にも島根県ではアナゴが全国1位の水揚げ量で、その半分ほどが浜田漁港へ水揚げされます。東京湾や瀬戸内海のものより大型で脂ののりも良好なものが主体とのこと。年間を通じて多種多様な魚介類が水揚げされる「山陰浜田港」は、四季折々に訪れてみたくなる場所です。

浜田漁港にて。左から大貫さん、事務局長の石井信孝さん、渡邉さん、内田さん、天田さん。

浜田魚商協同組合
住所:島根県浜田市原井町3025
TEL:0855-22-1788
http://www.hamada-minato.jp

一つ一つの“手”は小さくても。これからの石見の可能性

生産者、販売業者、行政が手を取り合って、ブランド価値を高める取り組みがあちこちで見られる島根県石見地域。今や全国のあらゆる地方自治体が、国内外で積極的にPR活動を行う中、その結果に違いをもたらすのは、従来の垣根を越えた情報共有や協力体制、そして、そこから生まれる総合力。石見地域の点と点が繋がり、太い線となっていく時、その存在感はますます増していくのではないでしょうか。

(フェア情報)
石見地域の食材が東京で食べられる!「石見レストランフェア」開催
参加した3名の料理人が、食材はもちろん、風土や生産者などに触れて感じたことを東京でプレゼンテーション。石見地域の食材の魅力を味わって!

9月14日まで
16℃
9月30日まで
細小魚
ななかぐら ※通常は完全紹介制。本企画限定で利用可能 ※来店時は事前に各店へお問合せください。

島根県 しまねブランド推進課

TEL:
0852-22-5128

更新: 2019年9月24日

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