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食に携わる注目の人物をインタビュー

料理を支える「和」の食材|WA Theater Restaurant 食の劇場×日本の水と空気

人気レストランとその料理を支える国産食材を紹介する連載「料理を支える『和』の食材」の第3回。前編では、異国の地・香港で勝負する「WA Theater Restaurant 食の劇場」の長屋英章シェフの「日本の水と空気」について紹介しました。果たしてそれがどのように料理されるのか……後編でお伝えします。

香港のゲストに伝えたい、「3つの“WA”への祈り」

日本の折り紙のように折られた美しいペーパー。その中には、六角形のメニューが隠されています。今宵のテーマは「薫風のためらい」。その下部には「3つの“WA”への祈り」――自然との調和の“WA”、生き物の融和の“WA”、世界の平和への“WA”、と記されていました。長屋シェフが料理を通してゲストに伝えたいメッセージです。彼を支える「日本の水と空気」が3つの“WA”に昇華された時、どんな世界が現れるのでしょうか?

日本の水と空気を素材に纏わせる

プロローグからシーン1〜10、そしてデザートのエピローグへと続く、長屋シェフのディナーコース(HK $1800)。各料理にはポエティックなタイトルがつけられています。写真は、「Scene 7. 継承〜食文化」。使用した鶏肉は、山口県初の地鶏「長州黒かしわ」。

ヨーグルトと白味噌、XO醬に漬けて乳酸系の旨みを纏わせた山口県産の地鶏「長州黒かしわ」。同様に風味をつけて凍らせたフォアグラをアイスパウダー状にしたものを添え、さらに鶏のエッセンスのソースを。このソース作りに、「白神山美水館」の水が欠かせません。

「従来のフランス料理的な“煮詰める”調理法ではなく、鶏の純粋なエッセンスを『白神山美水館』の水で“引き出す”ことでできるソースです。日本の出汁の取り方と同じですね。コンベクションに鶏肉と水を入れると、水分が詰まることなく鶏の旨みが引き出されるのです。超軟水だからこその調理法です」

日本にいると当たり前すぎる水のクオリティは、海外にいると最もこだわりたくなると長屋シェフは力説します。

そして、シェフを支える2つ目の素材「日本の空気」は、フォアグラに纏わせた味噌に隠されていました。つまり、日本の風土の中でつくられた味噌の乳酸菌の香りを「日本の空気」と、長屋シェフは捉えているのです。

「日本でしかできないもの。それは、香港では“私の武器”です。味噌のほかにも、熟成庫の中で眠る蔵囲昆布や、日本で業者に熟成してもらっている松川ガレイなども、『日本の空気』があってこその素材。明らかに香港にはない『空気』です」

料理名は「Scene1.薫風~躊躇い」。初夏の新緑の間を吹き抜ける薫風は、日本ならではの季節風。「香港がずっと夏みたいなので、どこから夏なのか“ためらい”を感じているという意味です」と長屋シェフ。その答えは、塩麹で風味づけした北海道のホタテに、枝豆のピュレとアワビのシヴェ仕立て、北海道だけの品種“旅路”のスパークリングワインのソースを添えて。

長屋シェフの記憶がデザートに

「EPILOGUE デジャヴ〜希望と祈り」。イメージソースは、かつて長屋シェフが見かけた女性の麦わら帽子。

最後に出されたデザート。その名前は「デジャヴ〜希望と祈り」。これは、長屋シェフが見た日本での風景がインスピレーションになっています。「花を刺した麦わら帽子をかぶった女性を見かけた時に、夏っぽくていいなあ、と」。そんな日本の夏の空気感を演出したかったのだとか。ホワイトチョコレートとココナッツ、そして宮崎マンゴーのムースに、涼しげな花がアクセントに添えられてあり、その甘酸っぱい味が、遠い夏の記憶を思い出させるデザートでした。

「実は、香港で暮らす前はココナッツが苦手だったのですが、今では毎日飲むくらいココナッツウォーターが大好きになりました。やはり『香港の空気』がそうさせているのでしょうね!」と、笑い話で取材を締めくくってくれた長屋シェフ。この日は、香港の大スター夫妻が来店予定でした。オープン時は多かった日本人客はすっかり減り、今ではほぼ外国人が席を埋めるといいます。このように香港を舞台にチャレンジする長屋シェフを通じて、日本の食文化が世界に広く発信されることを、心から応援したいものです。

写真・伊藤徹也

WA Theater Restaurant 食の劇場

WA Theater Restaurant 食の劇場

住所:
Shop on the LG/F and UG/F., The Pier Hotel, Pak Sha Wan, Sai Kung, New Territories, Hong Kong
TEL:
+852 2779 7797
営業時間:
ランチ12:00〜14:30、ディナー18:30〜22:30
定休日:
火曜日
URL:
http://wa-theater.com

更新: 2018年7月27日

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