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食に携わる注目の人物をインタビュー

シェフの必需品|千駄木「和菓子 薫風」つくだ さちこ ~後編~

東京のグルメシーンを索引するシェフにとって、料理を作る上で欠かせない道具や食材をご紹介していただくコーナー「シェフの必需品」。前回は千駄木の和菓子屋『和菓子 薫風』のつくだ さちこさんの和菓子の道に進んだ理由や、和菓子に対する想いをうかがいました。そして、今回お聞きしたのはつくださんにとっての“必需品”について。早速ご紹介していきます。

製薬会社から飲食の世界へ転身を遂げ、夜学で料理を学び、その後様々なジャンルの料理店で腕を磨いた店主のつくださんが2012年7月にオープンした和菓子屋「和菓子 薫風」。こちらのお店は和菓子と日本酒のマリアージュが楽しめるという、今までの常識を覆す一店。「和菓子の出来立ての面白さを感じて欲しい」というつくださんの強い思いは、料理で使う原材料や道具までにも行き届いています。本日は、そんなつくださんのこだわりが詰まった必需品3つをご紹介いたします。

「濃し袋」

1つ目の必需品は全てつくださんの伯母の手によって作られた、こしあん用の濃し袋。大切そうに優しく、濃し袋を手に抱えるつくださんはこう語りました。

「最初の頃は、さらしを重ねて棒に乗せ、流していくように使用していたのですが時間ロスが厳しく、伯母に頼んで作ってもらったんです。これによって飛躍的にこしあんを作れるようになりました。」

水分の抜けた生餡に対して45%の砂糖を使用して炊き上げるという、薫風のこしあん。その際に、水がきちんと切れていないと重量比が変わって味わいが変化してしまうのだそう。そのため、この濃し袋はつくださんにとって無くてはならない必需品というわけです。また、こしあんを飛躍的に作ることができるようになったことは、今のお菓子の種類の幅広さが実現する要因ともなっています。

「レモン」

「料理の腕を上げ、いざ美味しいものを作ろうとなった時に、国産のものがもうないという状況だとしたら、それはもう和菓子としての意味を成さないと思います。」

と真剣な表情で言葉を紡ぐつくださんは、原材料は国産を使用するという強いこだわりを語ってくれました。国産かつできるだけ無農薬で作られた商品を安定的に購入・使用することで、お客様には安全な品物を提供でき、農家さんも継続して栽培を行うことができるということを意識されているのだそう。

「ですが、無農薬だけではなく、減農薬のものも使用しています。それは農家さんの生産や市場の安定を守ることにもなるので。花が咲く前だけ水溶性の農薬で花を害虫から守り、その後は何もしないというものでも表示は減農薬使用になるのです。こういうことも実際生産者と話をしないとわからないことが多いことだと思います。農家さんの生活も守り、安全性も確保する、そんな食材を和菓子薫風では使わせていただいています。」

2つ目の必需品であるこちらのレモンは、愛媛県の岩城島産のジャンボレモン。果肉が少なく、ピールを使用するレモンどら焼きに最適な一品です。苦味が少なく、爽やかな味わいが特徴。つくださん自ら農家に出向いて、収穫をすることもあるのだそう。日本の将来も見据えられているつくださんの輝く瞳は、この方がいらっしゃれば日本の和菓子業界の先は長いと思わせてくれるような希望に満ち溢れていました。

「大納言小豆、白手忙隠元豆」

3つ目の必需品は、北海道十勝産の大納言小豆と、白手忙隠元豆です。豆のつぶつぶした感触を味わえるのが特徴で、栗のようなほっくりとしたいい香りも楽しめます。
さらに、ここではつくださんの継承者である“自覚”と“責任”を垣間見ることができました。

「日本の食文化や技術を継承する一人になり、使っている食材がメカニズムをきちんと理解した上で使うということを、使う側である私たちも考えなければならない。」

レモン農家さんの時と同様に、小豆の手摘みも農家さんまで手伝いにいくことがあるのだそう。そこで、大変な作業をして作られていることや、栽培ができている場所や環境が確保できている尊さを感じて、それをお客様に伝えます。そして、その材料に対して価値観を正しく持ってもらうことが、材料を使う側の役目であるとおしゃっていました。

今後は、和菓子を楽しむ時間を提供していきたい

そんなつくださんに今後の展望を伺うと、和菓子の時間をもっと提供したいと語ってくださりました。

「和菓子と日本酒という新しいペアリングを提案することで、日常生活に和菓子と日本酒が入っていける。そうすれば、和菓子を食べるという機会、また和菓子を楽しむ時間を提供できると考えています。」

和菓子の明るい未来と、食材の大切さを教えていただいた今回の取材。今後のつくださんの活躍に益々期待です!

和菓子 薫風ワガシ クンプウ

住所:
東京都文京区千駄木2-24-5
TEL:
03-3824-3131
営業時間:
[水~金] 13:30~20:00 [土・日] 13:30~19:00
定休日:
月曜、火曜、土日不定休
URL:
http://wagashikunpu.com/

更新: 2017年10月25日

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