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シェフの必需品|外苑前「Abysse(アビス)」 目黒浩太朗 ~後編~

東京のグルメシーンを牽引するシェフにとって、料理を作る上で欠かせない道具や食材をご紹介していただくコーナー「シェフの必需品」。前回は外苑前にある魚介をテーマにしたフレンチ「Abysse(アビス)」目黒浩太郎シェフに、料理と向き合うにあたっての考え方を語っていただきました。それを踏まえて、今回は目黒シェフの必需品をご紹介します!

2015年3月、「Florilege (フロリレージュ)」が移転する前にあったその場所に「Abysse(アビス)」をオープンした目黒浩太郎さん。「30歳になるまでに独立する」という目標が一つ叶ったわけですが、それは自分の料理への深い探究の始まりでした。「よく“何を一番大事にしている?”と聞かれるのですが、その質問が苦手で。私にとっては調理に関わること全部が大事なんです。食材の温度のコントロール次第で、食感も、香りも、味わいも変わってくる、それにより味付けも調整して・・・、というようにひとつひとつの要素が全てつながっていると思うんです」。そう語る目黒さんの料理は緻密に計算された複雑な料理、食材の魅力をシンプルに引き出した料理と、流れるようにコースが組まれています。「複雑な物、シンプルなもの、強いもの、弱いもの、抑揚をつけた流れを意識しています。貝、魚、甲殻類、ウニ、内臓系、イカ・タコ・・・と、何を出した後に何を出せば、より次の一皿が際立つかを考えていて、お鮨屋さんのおまかせのような考え方かもしれませんね」。

そんな目黒シェフのスペシャリテは「スープ・ド・ポワソン」。クラシカルなレシピを日本の魚で表現しようとすると、どうしても理想の味には近づけなかったと言います。「日本の魚は繊細で、ストレートに“美味しい!”というような、フランスの魚が持つパワーがないと思うんです」。試行錯誤した結果、今の味になったと言いますが、そのポイントは2つ。1つは食材で、オレンジなどの柑橘系を使うことで濃厚な中にも爽やかさを加え、さらにスパイスも多くの種類を使うことで複雑に。先ほどのパワー不足を補うために、鶏ガラスープを加えているというからから驚きです。

そして2つめが、この「ムーラン」という調理器具。「Abysse(アビス)」の「スープ・ド・ポワソン」が持つ独特のとろみや濃厚さは、この「ムーラン」の大小2つの網で2回濾すことで生まれるのだとか。本場でも2回濾す手間をかけるお店は珍しい。「フランスから取り寄せたもので、網の目が大きいものだけだと骨などの余計な部分が混ざってしまう、細かい目のものだけだと濾しとれない部分が多く旨味を逃してしまう。それならば異なる大きさの網目のもので2回濾せば良いという考え方に行きつきました」。雑味を残さず、クリアに、そして魚介の旨みを最大限濾し取ることができる「ムーラン」は目黒さんにとって必需品。

日々、仕入れによって変わる魚を5~7種類ほどに加えてオマールエビを使った「スープ・ド・ポワソン」は、仕込むごとに微妙に味が変わるとか。「最近、ようやく安定してきました。お客さんにとっては変わらないかもしれませんが、毎日仕入れによって魚も変わるので、味わいも微妙に変わってきます。その日に来た魚たちの良さを引き出して完成するスープ・ド・ポワソンは、自分でも毎日の味見が楽しみなんです」

続いては、目黒さんの思考に必要な必需品をご紹介。

世界のシェフのレシピ本

日本が世界に誇れる魚介を、フレンチを通じて伝える目黒さん。もちろんその目線は世界を向いています。「本当は自分で食べ歩いて実際に確かめたいのですが、オーナーシェフとしてお店を経営しているとそうはいきません。これらの本に記されている世界のトップシェフたちの言葉、考え方。レシピのひとつひとつかた読み取れる思想。そして表現方法を学ぶために読んでいます」。最も心に残っている言葉が「noma」レネ・レゼピ氏の「Time & Place」。「今の自分が、日本という土地でできる料理とはなんなのか、今はそれを突き詰めています」。

日本酒

「ワインが好きでソムリエの資格も持っているのですが、やはり魚介と日本酒の相性も素晴らしい。しかも、今は様々なことに挑戦している酒蔵さんが多く、世界に目が向いています。そんなところが、私たち『Abysse(アビス)』の姿勢と通じるところがあって、積極的に日本酒を取り入れたいと思っています。今後は日本酒ペアリングにも挑戦したいですね」。

「世界」や「挑戦」という言葉が多く聞かれた目黒さんのインタビュー。「まだまだ自分のスタイルを決めたくなくて、好き勝手やってスタッフに迷惑をかけています」と笑います。ただ、端から見てみれば、魚介にテーマをしぼったフレンチということで、すっかり確固たる個性を掴んでいるように思えます。「まだまだ魚介の世界は奥が深くて」と、さらに魚介と向き合い、自らの世界観を深く深く掘り下げるつもりのようです。

次回は新橋のフレンチ「Sublime(スブリム)」加藤順一シェフが登場

新橋はマッカーサー通りから一本入ったことろに、クラシカルな麩ランチの技法と、モダンフレンチ、ニューノルディックのデザインを見事に融合させたレストランがあります。目黒さんからご紹介いただいたのは「Sublime(スブリム)」の加藤順一シェフ。どんな必需品が登場するのか、お楽しみです!

Abysseアビス

Abysse

住所:
東京都港区南青山4-9-9
AOYAMA TMI 1F
TEL:
03-6804-3846
営業時間:
12:00〜13:30LO、18:30〜20:30LO
定休日:
水曜日
URL:
http://abysse.jp/

Photo よねくらりょう

更新: 2017年6月6日

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