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食に携わる注目の人物をインタビュー

シェフの必需品|代々木上原「Gris(グリ)」 鳥羽周作 ~後編~

東京のグルメシーンを牽引するシェフが、料理を作る上で欠かせない道具や食材を紹介する新連載「シェフの必需品」。前回は代々木上原にあるモダンフレンチで、東京で最も勢いのあるレストラン「Gris(グリ)」の鳥羽周作シェフの料理にかける想いをうかがいました。そして今回は鳥羽さんの必需品をご紹介します!

「道具には全くこだわりがないんですよね」と語る鳥羽さんですが、そのかわり使っている食材にはそれぞれ作り手、作られた過程、ストーリーに惚れ込んだものばかり。「Gris」ではそれらの食材が持つ物語を料理をサーブする際にしっかり食べる人に紹介してから味わってもらうようにしています。生産者と食べ手を繋ぐことを自らの役割だと自負する鳥羽さんにとって当然のスタイルですし、その方が食べる側もより美味しくいただけるというもの。「例えば、皿を出すタイミングでお客様が席を立ったら、迷うことなく作り直します。そうしないと最高のタイミングで味わってもらえないし、何より食材を僕に託してくれた生産者に申し訳ない」。食材は生産者から料理人へ渡すバトン・・・と、良く表現されますが、もはや遠くはなれていても二人三脚のような一体感。これこそが「Gris」が生み出す料理の美味しさのもとになっているのです。今回、鳥羽さんにご紹介いただいた食材は4つ。それぞれが今の「Gris」のメニューに欠かせないもの。

セドリック・カサノヴァのオリーブオイル

パリ10区で食通たちや有名店のシェフを常連に持つシチリア産のオリーブオイルと食材の店「La Tête Dans Les Olives(ラ・テット・ダン・レゾリーヴ)」の東京店としてオープンした外苑前「Cedric Casanova(セドリック・カサノヴァ)」。名物は単一品種✕単一畑のオリーブオイルで、パリではアラン・デュカスやピエール・エルメも愛用。「Gris」では3種類を使い分けています。フレッシュな青草の香りの「フランチェスコのビアンコリーラ (FRCIB) 」はパスタに。うまみが強くパンチのある「サルヴァジオのノッチェラーラ (GISAN)」はマグロのブレザオラとケイパーのリゾットに。マイルドで後味に切れがある「パオラのノッチェラーラ (MAMUN)」はスペシャリテのピジョンに使い、鳩肉が持つ滑らかさを強調する。「オリーブオイルでもこれだけ品種と作り手で味わいが変わるのには驚きました。定期適所で使い分けています」

セドリック・カサノヴァ
東京都渋谷区神宮前3-1-14 1F
03-6721-0434
http://cedriccasanova.jp/

銚子山十のひ志お(醤)

1630年創業の発酵調味料のお店「銚子山十」。ここでは無添加の“固形醤油”である天然の「醤(ひしお)」を作っています。大豆と大麦から麹を作り、1年以上熟成させ、見た目は味噌に近いのですが、味わいは醤油。その起源は万葉集の時代まで遡ると言われています。「これをソースに使ったら最高。スペシャリテのピジョンの一皿で、フォン・ド・ヴォーに溶かしてソースとして使っています。甘みも塩みもこれで決まるし、鳩が持つ独特な匂いをマスキングする役割にも。もちろんそのまま食べたり、チーズに乗せても美味しいんです」

銚子山十
千葉県銚子市中央町18-3
0479-22-0403
http://www.hishio.co.jp/

セドリック・カサノヴァのドライトマト

こちらも「セドリック・カサノヴァ」の商品で、完熟トマトの酸味とうま味が凝縮した「フィノキアーロのドライトマト」。水を与えずに育てた完熟トマトに塩をふり、夏の強い日差しで乾燥させたもの。「水につけておくと、濃厚なトマトのスープが取れるんです。そのスープに茹でた菜の花、セロリのサラダ、リンゴの泡を乗せたしゃぶしゃぶ豚肉を浸して冷しゃぶとして出しています。もう、とにかくトマトの旨みがすごいんです」

越田商店のもの凄い鯖

1947年から続く茨城県波崎の干物店「越田商店」。長年、国産の鯖で干物を作り続けてきたのですが、漁獲量の激減と、やせ細って満足できる鯖が手に入らないことからノルウェー産の鯖に切り替えました。実は日本の漁業とは違い、ノルウェーではサスティナブルな仕組みを用いて鯖漁を行っているんだとか。そんなストーリーも添えて「Gris」で提供されています。ジューシーな脂と締まった身、そして越田商店が40年以上継ぎ足した熟成漬け汁の味わいは、まさに“もの凄い”美味しさ。このもの凄い鯖がオマケに付いた雑誌「イサリビ」を創刊した堀田幸作さんの紹介で越田商店の代表である越田英之さんに出会い、鯖のこと、日本の漁業のことを教えてもらいながら、食べさせてもらったという。「この鯖を食べた瞬間、皿のイメージができたんです。そしてこの鯖のことをもっと多くの人に知ってほしいと。ビーツともの凄い鯖を合わせた赤い皿はGrisのスペシャリテ。“フレンチの店が干物?”って意外に思うかもしれませんが、美味しければなんでも取り入れたいんです。そのギャップによって、お客様もびっくりしてくれるし、SNSでも拡散されて、この鯖のことをもっと知ってもらえて、紹介してくれた堀田幸作さんや、作ってくれた越田英之さんのことも知ってもらいたい。それが僕の役目だし、日本の漁業の一助にもなれるのかなと思ってます」。

monosugoi shop
http://monosugoi.shop/

1皿1皿を構成する食材ひとつひとつに意味があり、伝えたいストーリーがある。その食材を作る人、伝える人に出会っているからこそ、鳥羽さんはその熱量を料理として表現できる。「Grisの皿はテンションが高い」と言われるのは、そんな理由があったのです。世界に通用する“美味しい”を目指して、取り入れられるものは貪欲に取り入れ、お客さんにも同業者にさえも、その良さをシェアできる。「良いものはちゃんと広まって、色んな人に評価されないと、真面目に作っている人が報われないですよね。僕は気に入ったものはシェフ仲間みんなに教えるんです。同じものを使ったって、同じ料理にはならないし、誰がどう使うのか違いも面白い」。横の繋がりが強い、今の時代の料理人らしい感覚。もちろん自分の料理への自信があるからこそ気持ちよくシェアできるのでしょう。

次回は国領のイタリアン「Don Bravo(ドンブラボー)」平雅一シェフが登場

鳥羽さん曰く「料理に対する愛情がすごい。あんなに料理が好きな人は見たことないんです」と紹介してくれたのは京王線で新宿から調布方面におよそ30分のところにある国領「Don Bravo(ドンブラボー)」の平雅一シェフ。都心から離れているにもかかわらず、美味しいもの好きや料理人までも訪れ、その料理の美味しさに感動して帰るとか。次回は平雅一シェフに料理にかける想いと、必需品をご紹介していただきます!

第1回の鳥羽シェフの料理にかける想いはこちら

http://foodport.jp/people/27479.html


>国領「Don Bravo(ドンブラボー)」平雅一シェフのインタビューはこちら

http://foodport.jp/people/28208.html

Grisグリ

Gris

住所:
東京都渋谷区上原1-35-3
TEL:
03-6804-7607
営業時間:
12:00〜13:30LO(土・日・祝日のみ)、18:00〜21:00LO
定休日:
水曜、月2日火曜日定休
URL:
http://gris-yoyogiuehara.com/

Photo 鈴木彩

更新: 2017年4月25日

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