GIFT

大切な人への贈り物に、ちょっとした手土産に

日々をより豊かに暮らすためのヒント集

|料理家のご馳走モノ|
渡辺康啓さん

「馳走」とは、昔、大事な客人をもてなすために馬を走らせ、奔走し、様々な食材を調達してきたことに由来する言葉。江戸時代後半には、もてなされたことへの感謝を込めて、「御馳走様」が食後の挨拶として使われるようになったと言われています。そして、「ご馳走」と言えば「もてなし」や「豪華な食事」という意味になるわけですが…、しかしながら思うのです。モノやコトに溢れた時代に暮らす私たちのご馳走とは、“もてなし”や“豪華”に限らないのではないでしょうか。例えば、誠実に育てられた野菜、大好きな母の手料理、大切な人とテーブルを囲む時間なども、“日々のご馳走”と呼ぶことができたり。普段の食事が自分にとって“ご馳走”である、そんな風に言える暮らしに憧れて、私たちは料理家の皆さまに会いに行くことにしました。なぜならきっと料理家とは、“日々の食事”を“日々のご馳走”に成長させるアイデアを提案してくれる存在。だから様々な料理家さんにお会いして、まずは料理をする上で大切にしているモノ=食材・食品・道具など(名付けて「ご馳走モノ」)を教えていただきながら、料理のこと、暮らしのこと、話を聞いてみたいと思います。料理家たちの言葉をヒントに、皆さんも、自分にとっての日々のご馳走のこと、ぜひ考えてみてください。

渡辺康啓さん{Yasuhiro Watanabe}

くいしんぼうの父とパティシエの母の間に生まれる。大学卒業後、COMMEdesGARCONSに勤務し、独特の美意識を学んだ後、2007年、料理家として独立。季節感を凝縮させた、見た目にも美しい料理を手がける。著書は『春夏秋冬毎日のごちそう』など。また、料理教室も主宰している

小さな店と明るい人々に囲まれて福岡の暮らしが教えてくれたこと。

突然ですが、「洗練」という言葉が「磨きをかけて、垢抜けたものにすること」の意であるなら、まさに渡辺康啓さんのお料理はその2文字がピタリと似合います。食材本来の旨みを磨き、アイデアをふんだんに盛り込みながら料理を作る、渡辺さんはこれまで東京のおしゃれな料理家の1人として常に注目を集める存在でした。しかし昨年6月、福岡県へ移住したという。…まさか。「例えば、朝掘り立てのタケノコを買って、その足で『AppleStore』に立ち寄ることもできますし、福岡は『程良く都会、程良く田舎』なのが良いんです。一昨年の6月に初めて訪れて、博多駅を降り立った瞬間にピンときましたね。それまで特に東京を離れたいと考えていたわけではありませんが、『この街は良い』という直感の方が勝ってしまったんです。その後、7回福岡に来て、ちょうど1年後に引っ越しました」都会的なものが凝縮されている先進都市でありながら、電車で2駅も行けば、田んぼが広がっているというちょうど良いサイズ感。福岡のみならず、九州全体で考えてみれば、山も海も、農業も酪農も、とにかくこの食材の豊かさは料理家冥利に尽きると渡辺さんもつい意気が盛んになるわけです。そんな渡辺さんが、福岡に住み始めたおかげで気づいたことがいくつかあるそう。それは“個人店”のチカラだと言います。「福岡には個人経営の小さな商店がたくさん残っていて、例えば野菜も近所の八百屋さんへ買いに行きます。東京でスーパーに行けば日本全国、世界各国から運ばれてきた食材ばかりですが、福岡の八百屋さんには当たり前のように県産野菜しか置いていなかったりするんです。だから新鮮なことはもちろん、自分とつながりのある土地の食材を使えるのも何だか少し嬉しいんです。八百屋さんに並ぶ野菜を眺めながら『今日はどの野菜が美味しそうか?』から『これを使って何を作ろう?』まで、福岡に来てからは店先でいろんなイメージを膨らませながら買い物するようになりました。あと、こちらの人は面白い人が多くて、お店で交わす会話もなかなか楽しいですよ」。心を通わせるお店で買った地元食材や、知り合った生産者から直接手に入れた食材を使った方が単純に料理する喜びが増えることを実感しているのだと言う渡辺さん。土地と店と人とつながりながら暮らすことで、渡辺さんのお料理も、日々の暮らしも、より味わいが豊かになっているようです。「福岡の人たちは地元をとても大切にし、飲食店も大手チェーン店より個人経営の店の方が圧倒的に人気です。しかも、何しろ安くて、味のレベルも非常に高い。夜もわざわざ電車に乗って飲みに行くより専ら近所の店ばかりという人も多く、皆、たとえ初対面でも明るく、すごく気さくです。だから、私も飲みに行く度に地元の友人が増え、東京にいた頃は、飲みに行くのはせいぜい月に2〜3回でしたが、今はお誘いをすべて受けていることもあって、飲みに行かない日が月に2〜3日くらいになりましたね」

01.福岡県「crea pa」の焼き菓子・ジャム

渡辺康啓さんが「何を食べても間違えなく、とびきり美味しい」と断言する、「クレアパ」のお菓子とジャム。パティシエの田中博子さんは、フランスで“ジャムの妖精”と呼ばれるクリスティーヌ・フェルベールさんの下でジャム作りを学んだ経験もお持ちです。今は福岡に拠点を置き、お店に卸したり、オンラインショップでのみ販売しています。商品は人気のためすぐに売り切れになってしまいますが、オンラインショップを見てみれば「予約受付中」という商品があったりしますので是非チェックを。写真はプレミアムレーズンサンド、イチゴジャムの「野生の黒胡椒」
http://creapa.thebase.in/

02.イタリア「PietroRomanengoFuStefano」のシュガーボンボン

ジェノバにある、1780年創業の老舗砂糖菓子専門店「ピエトロ・ロマネンゴ」。その本店にも訪れたことがあると言う渡辺さんが「パッケージのデザインも素敵なので、贈り物にも良い」とおすすめなのが、シュガーボンボン。砂糖、オレンジキュラソー、アニス、ローズシロップ、桃のリキュールなどを使用したキャンディで、口に入れてカリッとかめば中から豊潤な香りのシロップがふわっと広がります。色ごとに味や香りが全く異なり、例えばピンクは無農薬のローズを煮詰めて作られています

【問】NONNA&SIDHISHOP
電話:03・5458・0507
住所:東京都渋谷区西恵比寿2・10・6
http://www.nonnaandsidhishop.com/

03.新潟県・吉田金属工業の「GLOBAL」包丁

世界が認めた日本の技術力。新潟県燕市で、熟練した職人の手で製造されている「GLOBAL」は1983年に発売され、そのオールステンレス一体構造という斬新なデザインと軽い切れ味で世界中を驚かせました。現在、製造数の約85%が海外へ出荷されるという日本が誇る「MadeinJapan」ブランドです。「ステンレスで丈夫。グリップも手によく馴染み、これがないと仕事ができません。また、研ぎ直しのサービスがあり、メーカーへ送れば新品さながらのピカピカ状態で戻ってくるという、一生モノの逸品です」(渡辺さん)

【問】吉田金属工業
https://www.yoshikin.co.jp/(オンラインストアあり)

取材に訪れた日、渡辺さんはとびきり美味しいランチを用意してくれました。メニューは「キャベツとディルのスープ」「アスパラのアーリオ・オーリオ」(ペペロンチーノ)。いずれも渡辺さんはこの日に初めて作る料理で、頭の中でイメージしながら、その場で味見しながら作ってくれました。渡辺さんはスタジオ(福岡)で料理教室を開いていますが、生徒さんは地元の人のみならず、東京から参加される方もいるそうです。

04.イタリア「StuporMundi」エキストラヴァージン・オリーブオイル

このオリーブオイルと隣に並んでいる赤ワインビネガーは渡辺さんがヘビーユーズしている2本で、渡辺さんの料理教室の生徒さんもほとんど皆が持っているというほどのおすすめ具合。オリーブオイルはイタリアの著名なオリーブオイルテイスター兼ブレンダーのクリスティアーノ・デ・リッカルディス氏が「カーサ・モリミ」(日本の輸入会社)のために特別にブレンドしたもの。ほど良い苦みと辛みのバランスが見事です。「酸度0.1%台の非常にフレッシュなオリーブオイル。まろやかで、食材と組み合わせた時の素晴らしい香り立ち。あらゆる料理の仕上げやドレッシングなどに重宝です」(渡辺さん)

【問】カーサ・モリミ
http://www.casamorimi.co.jp/(オンラインショップあり)

05.スペイン・ヴェア社の「L’ESTORNELL」赤ワインビネガー

「力強い熟成香で、加熱しても香りの豊かさが損なわれることなく、旨みに変わります。ドレッシングはもちろん、煮込みにも使用しています」。かく話す、渡辺さんがここ8年くらい愛用しているのが「L’ESTORNELL赤ワインビネガー」。ワインの名産地・カタルーニャ地方プリオラート南部で収穫された、ガルナッチャ種赤ぶどうから造られた赤ワインを、樫の木樽の中で熟成させています。バラを思わせる赤褐色の色合いを持ち、爽やかでフルーティーな香りの中にほのかな樫の木樽の香りが感じられます

【問】弓田亨商店
http://www.ilpleut.co.jp/yumitastore/(オンラインショップ)

写真の鍋は、ストウブ。渡辺さんは好きで大中小10個くらい持っていると言います。一番よく使うのは20cmのラウンド型。厚手の鍋なので、ゆっくり弱い火でも温まって、加熱ムラができにくいのが良いのだとか。「色と形ともに好きですが、機能的にも非常に優れた鍋です」(渡辺さん)

渡辺康啓

料理家 渡辺康啓

くいしんぼうの父とパティシエの母の間に生まれる。大学卒業後、COMMEdesGARCONSに勤務し、独特の美意識を学んだ後、2007年、料理家として独立。季節感を凝縮させた、見た目にも美しい料理を手がける。著書は『春夏秋冬毎日のごちそう』など。また、料理教室も主宰している

contributing Editor&Text バブーン(矢作美和、古里文香、茂木理佳、川上萌、井上真子人)
Photo:長野陽一

※こちらの記事は2016年4月20日発行『メトロミニッツ』No.162に掲載された情報です。

更新: 2016年12月16日

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