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今夜も“月”が楽しみになる
PEACE FULL MOON(ピースフルムーン)[3]

[“月”という文化]
近くて遠い存在の月を人々はどのように捉え、付き合ってきたのか。

今夜も“月”が楽しみになる「PEACE FULL MOON」

「peaceFullmoon」とは?
2011年9月から始まった活動。“満月の日” を地球や人々にとって特別な日と捉え、下の3つの約束を掲げています。満月の日には空を見上げ、地球の営みに感謝し、争わず、分かち合うこと。そして、大切な人たちと心豊かな時間を過ごすことをご提案。そんなふうにpeaceFullmoonという言葉に、毎月、満月の日は世界中の人々のもとに平和な夜が訪れてほしいというメッセージを込めています。

peaceFullmoon“3つの約束”
一、 満月の日は、大切な人と心豊かに過ごすこと。
一、 満月の日は、怒らず、争わず、許しあうこと。
一、 満月の日は、万物の営みに感謝をすること。

下の写真、大覚寺の大沢池は、満月鑑賞のためにデザインされた建物です。空に輝く月は毎日現れるけれど、毎日姿を変える、不思議な存在。私たち人間は、月をどのように暮らしの中に取り入れてきたのか?まずは「月見建築」からご紹介。

旧嵯峨御所大覚寺門跡
勅使門前からの月。境内の東側に位置する広大な大沢池では、嵯峨天皇が船遊びをしながら月見を楽しんでいたと言われています。
075・871・0071 京都府京都市右京区嵯峨大沢町4 開館時間9:00~17:00(受付は16:30まで) 無休(寺内行事により内拝不可日有り)
http://www.daikakuji.or.jp/

【月のデザイン、いま・むかし。】

月を愛でるために建物を設計するほど、今も昔も、日本人はずっと月が好き。ここでは“月とデザイン”をテーマに、月を紐解いてみましょう。

建築をキーワードに月を見つめ直してみると、古くから日本人にとって月が身近な存在であったことがよくわかります。月を愛でるために、建物を設計してしまうほど…。

たとえば、京都の「正伝寺」。自決した武士の血が残る伏見城の床が移されたことから、“血天井”のある寺としても知られていますが、美しい“月の寺”という別名が。庭園から見ると比叡山をなぞるように月がのぼることから、月見のために設計されたことはほぼ間違いないと言われています。
また、正伝寺だけではなく、「大覚寺」にある大沢池も「月を水面に映して見るための池」だったのではと言われていますし、あの「銀閣寺」も、庭や二階、どこからでも月が楽しめるよう設計されています。日本人は月を眺めることに相当どん欲だったのでしょう。

正伝寺

写真提供:京都を歩くアルバム

比叡山を借景にした月が拝める庭園は、江戸時代初期の小堀遠州作。サツキの上を獅子の子が飛び跳ねて渡る様に見立てられ「獅子の児渡し」と呼ばれています。
075・491・3259 京都市北区西賀茂北鎮守庵町72 開館時間9:00~17:00 無休 一般拝観料400円(小学生200円・中学生300円)
http://shodenji-kyoto.jp

もちろん、月をデザインに用いているのは、古い建造物だけではありません。たとえば、鹿児島県にあり“こどもと自然が共存する保育園”がコンセプトの「照明保育園」には、“満月のシルエットをした宇宙船”をテーマに設計された天球形ホールがあります。また、青山で人気のライブハウス「月見ル君想フ」では、“世界中どこでも、見上げる月はひとつ”という連帯感をイメージして、いつも店内のステージの奥のスクリーンに、大きなまん丸の月が。訪れた人を、やわらかな月明かりが包み込んでくれます。

人が過ごすあらゆる場所に、昔も、今も、月への想いがたくさん隠れています。さて、あなたの家の窓からは、今宵、どんな月が見えますか?

照明保育園

写真提供:照明保育園

「『すべてのこどもが生きる場』が、私が目指してきた保育園です。あなたはあなたのままでいい」と、理事長の藤谷文孝さん。その想いを体現するべく、建物も『自然であること』をコンセプトに設計を依頼したそう。
0995・58・3005 鹿児島県霧島市溝辺町麓2560
http://www.ans.co.jp/n/syoumyou/index2.html

月見ル君想フ

写真提供:月見ル君想フ

スクリーンの月は“地球に早変わり可能”。その際は、店内が月になり地球を眺める、という設定に変わるということです。また、毎年旧暦文化圏のミュージシャンが一同に集うイベントも開催。年々規模が広がっているとか。
03・5474・8115 東京都港区南青山4・9・1・B1F
http://www.moonromantic.com

【日本人が文字に描いてきた”月”】

最古の和歌集『万葉集』に始まり、日本人は昔から、さまざまな書物で月のことを描いてきました。ここでは、そんな月にまつわる作品を時系列でご紹介。並べてみると、日本人がいかに月が大好きなのかが、わかるはず。

奈良時代

『万葉集 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典』 角川書店・著 角川学芸出版・刊 620円

759年

「万葉集」
日本最古の和歌集。有名な「天の原ふりさけ見れば春日なる三笠の山に出でし月かも」など、月を題材にした歌を150首以上収録。

平安時代

935年

「土佐日記」 紀貫之
土佐から京に帰る最中の出来事が虚構交じりに綴られた、紀貫之の日記文学。月が美しく船を出したという「暁月夜」という挿話も。

『源氏物語 第一巻 桐壺〜若紫 現代語訳付き』 玉上琢弥・著 角川学芸出版・刊 820円

1001年

「源氏物語」 紫式部
光源氏を主人公にした平安の恋愛小説。実はこの小説のアイデアを紫式部が思いついたのは、琵琶湖で満月を眺めていた時という説も。

鎌倉時代

1178年

「山家集」 西行
西行による歌集。月を詠んだ歌は約375首ありますが、中には「秋の夜の月に心を誘われて落ち着かない」なんて歌も。月好きです。

1210〜1216年

「新古今和歌集」
後鳥羽上皇の勅命によって編まれた勅撰和歌集。収録されている月の歌は、なんと300首。中でも紫式部の作品などが有名です。

江戸時代

『新版 おくのほそ道 現代語訳/曾良随行日記付き』潁原退蔵・著 角川学芸出版・刊 740円

1702年

「おくのほそ道」 松尾芭蕉
松尾芭蕉による紀行文集。三日月がかかる様子を詠んだ「涼しさや ほの三か月の 羽黒山」をはじめ、月が登場する俳句多数。

近代

『尾崎紅葉の「金色夜叉」 ビギナーズ・クラシックス 近代文学編』山田有策・著 角川学芸出版・刊 860円

1897年

「金色夜叉」 尾崎紅葉
尾崎紅葉の、明治時代を代表する小説。「いいか宮さん」で始まる有名な一節に「一生を通して僕は今月今夜を忘れん」と月の描写が。

1927年

「白い満月」 川端康成
川端康成による小説。直接的な月の描写はもちろん、死を予知する娘との微妙な関係を不気味な白い満月で象徴しているかのよう。

 

『山月記・李陵 他九篇』中島敦・著 岩波書店・刊 840円

1942年

「山月記」 中島敦
中島敦の短編小説。作中の月の描写は、物語が進むにつれ、残月→白く光を失った月、と変化。登場人物の意識の象徴だという解釈も。

現代

1971年

「星と祭」 井上靖
琵琶湖を舞台にした小説。娘を失った男が主人公の物語で、ヒマラヤで月見をするというシーンが神秘的に描かれています。

『月と蟹』道尾秀介・著 文藝春秋・刊 1470円

2010年

「月と蟹」 道尾秀介
直木賞を受賞した道尾秀介の小説。物語を象徴する存在として月が登場。また同氏には『月の恋人〜Moon Lovers〜』という作品も。

Text 岸野愛(STUDIO MAGIC)

※こちらの記事は2013年5月20日発行『メトロミニッツ』No.127に掲載された情報です。

更新: 2017年5月18日

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