SPECIAL

食と暮らしを豊かにする特集記事はこちらです

心に響く「時代」や「暮らし」
|100年後まで残したい料理本[11]|

原点は“プロ向け料理本”にあり
12年目のひなぎくぎつね

「ひなぎくきつね」の営業日は、月にたったの3日間だけ。現在のメニューは、きび砂糖と小麦全粒粉を使ったレモン風味のスポンジケーキ「ガール」、緑と紅、2色のルバーブの甘煮をしょうが風味の全粒粉スポンジでサンドしたケーキ「るばるば」など…。

夏版:れんこんの豆乳キッシュ

「ひなぎくきつね」のお菓子が普通のカフェとは何だか違うのには、理由があります。店主の森守さんは、ベジタリアン専門とする食生活アドバイザーであり、料理と洋菓子のプロ向け専門書籍出版社「モーリスカンパニー」の編集者として数々の書籍を世に輩出してきた人です。12年前、会社の一室で「ひなぎくきつね」を始め、最初の3年間は、ヨーロッパに古くから伝わるお菓子のレシピを現代の女性が好みそうな可愛らしい外見で作ることに挑戦(その古いレシピとは、『ホテルとレストランにおけるアントルメ選集』の中から選んだ)。以来、18世紀の貴族のお菓子、米粉を使ったお菓子など、その時ごとにテーマを掲げ、専門書に携わってきた者ならではの発想力で、様々なメニュー作りを試してきました。そんな森さんが過去に編集された本の中から選んでくださった「料理本」は、木沢武男さんの『料理人と仕事』です。

「一番印象的だったのは、木沢さんに『才能ある料理人とは?』をお聞きしたら『真似ができる人』とおっしゃった。料理人だったら、美味しい・不味いではなく、この味を作りなさいと言われたら、味を分析して、再現ができること。それを『手の通りになる』と表現されていましたが、若手を指導していた30〜40年の間に、手の通りになる料理人は3人だけ育てられた、と」。木沢さんは、弱冠19歳にして東洋ホテルの料理長に就任。以来、様々なホテルやレストランで、常に「料理長」であり続けた。東京プリンスホテルの総料理長に就任したのは1967年、50歳の時のこと。当時、帝国ホテルの村上信夫シェフ、ホテルオークラの小野正吉シェフ、そしてプリンスホテルの木沢シェフが日本のホテル業界の3大料理長として肩を並べたが、木沢さんだけはテレビなどの表舞台に出ることもなく、粛々と厨房に立ち続けた。「これは木沢さんが69歳の時に出した本。料理長のとして、長く後進の指導者であり続けた木沢さんは考えた末、ここには良いことだけを書き残すことにしました。良くないことは自分の中で留め、初めに学ぶべき心得から、料理人には最後にどんな幸福があるか?まで、料理人の仕事と生涯について語り尽くしています」

【SELECTED BOOKS】

「料理人と仕事」
木沢武男・著
モーリスカンパニー・刊 6,480円
副題は「だれもが、自分のことを『幸福な料理人』と思えるように。料理人の職業ガイドブック」。中学生、高校生が職業選択の時に『料理人がどんな仕事か?』を知るために良いと、学校の選定図書にも認定された

「ホテルとレストランにおけるアントルメ選集」
フランソワ・ガッティ著 内海安雄・訳監修
モーリスカンパニー・刊 8,100円
洋菓子界で上位10冊以内に入るであろう定番書で、これも長く残すべき名著。作者はスイス人で、ホテルのシェフパティシエをしていた人。ヨーロッパ中のホテルを回って習得した各国のベーシックな菓子のレシピを900点紹介

2010年の秋~現在のテーマは、「小麦全粒粉とリアルフード」と女性限定の「夜のバー」。メニューはケーキに限らず、キッシュなども何種類かある。夜のバーの「時からメニュー」には、キャロット・ラペ、あいまぜ(江戸時代の料理)などの一品も。フード、ドリンクは一律500円(盛岡ビールのみ750円)。また、おみやげごはん、有機大豆の手作りしょうゆ(江戸時代と同じ製法)、ルバーブのコンポートなどのテイクアウトもあり。
詳しくはHPで www.vege-dining.com

ひなぎくぎつね

ひなぎくきつねがあるのは、1936年(昭和11年)に建てられた木造・洋館風の集合住宅「和朗フラット」内。

ひなぎくぎつね

住所:
東京都港区麻布台3・3・23
TEL:
03・3584・6010
営業時間:
カフェ12:00~17:00、バー(女性限定)17:00~20:00
URL:
http://www.vege-dining.com

Photo 井上美野 Text 編集部
※こちらの記事は2014年9月20日発行『メトロミニッツ』No.143に掲載された情報です。

更新: 2017年5月17日

この記事が気に入ったら
「シェア」しよう

最後までお読みいただき、ありがとうございます

pagetop