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編集部が訪れた美味しい名店『足跡レストラン』|蕎ノ字|人形町

編集部の足跡コメント

老舗の飲食店が多い人形町界隈。遊郭で有名な吉原があったのはこのあたりで、明暦の大火で大部分が焼失し、現在の吉原ができたのですが、浅草の新吉原に対して人形町は元吉原と呼ばれていました。歌舞伎小屋をはじめ、浄瑠璃や人形芝居の小屋もあったことから、人形町と町名がついたことからもわかるように、昔から多くの人で賑わい続けてきた町なのです。

1760年創業で鳥すきと親子丼で有名な「玉ひで」、どら焼きが美味しい1861年創業の和菓子店「清寿軒」、牛鍋屋として1895年に幕を開けた「人形町 今半」、1923年から江戸前の仕事を守り続けている「㐂寿司(きずし)」、ランチの雑炊はもちろん夜のネギマ鍋が絶品な1927年創業「よし梅」と数え上げたらきりがない人形町の名店と、そこに通う人々が町の表情を作ってきました。

そんな日本橋人形町の風情に惹かれて2016年に静岡は島田市から移転してきたお店があります。“天ぷら食って蕎麦で〆る”と記された暖簾を掲げた「蕎ノ字」。オープンして間もないお店ですが、早くも美味しいもの好きのみなさんがこぞって訪れ、予約の取れないお店になっています。

もともと「蕎ノ字」があった静岡県島田市は、現在もSLが走る大井川鉄道(7月には等身大?トーマスも走る!)が有名で、国内有数のお茶の産地。店主の鈴木さんはこの地に2000年に「蕎ノ字」をオープンします。20代のころから東京の名店を食べ歩き続けた経験から、いつかは東京で、それも天ぷらそば発祥の地である日本橋でという想いがあったそう。天ぷらの名店「みかわ」の早乙女氏の薫陶を受けたことでさらにその意志はかたまり、満を持して2016年10月に日本橋人形町に移転することになったのです。

昼の部はおまかせ3,800円と6,900円、夜の部は6,900円と8,900円のコースで、蕎麦の実を使った突出しから始まり、天ぷらを経て、〆は蕎麦という流れ。この突出しのそばの実に添えられた生のりが清々しいほどの磯の香り。大根おろしとなめこと一緒にさっぱりいただきました。

続いては、超粗く挽いたそばがき。なんでも、この粗さを出すためにコーヒーミルでそばの実を挽いているそう。口に入れると、そばの香りが広がるのですが、その余韻は切ないほどに切れ良く消えてしまうのです。天ぷらのあとに続く蕎麦への期待感が煽られ、蕎麦欲求が一気に高まりますが、しばらく美味しい天ぷらをいただきながら嬉しいお預け。上にちょこんと添えられたわさびも活き活きとした香りで、蕎麦の美味しさを引き立てていました。

さて、天ぷらがはじまります。まず最初はえびが2本。最初は塩で、2本目はおつゆでいただきます。浅めにあげられたエビはぶりっとした食感を残し、甘味が凝縮。えびの頭は甲殻類特有のパリパリの殻の香ばしさに、味噌の甘味が相まって、なんとも美味。

そしてキスを挟んで出てきたのは、島田人参。紙袋に入って、あつあつの揚げたてを手渡しでいただきます。軽やかな衣からホクホクの人参が顔を出すのですが、これが驚くほどの甘さ! まるで蒸した時のようなみずみずしさに驚きます。

続いては、駿河湾の太刀魚。実からは脂が溢れだし、とろける食感の1品。そして春を感じる蕗の薹。鮮烈な苦みが絶妙な火入れと優しい衣の甘みと調和し、鮮烈な苦みも美味しい。天ぷらの技法の神髄を垣間見れる美味しさです。

そして最も感動的だった御前崎のヒラメ。なぜか皮目にパリパリ感があり、実の部分はマシュマロのようなふんわりした食感。天ぷらによって、ここまで味わいと食感が変わる、その奥深さを体感しました。もう一品は3月ということでハマグリ。かえしを塗っていただく「蕎ノ字」ならではの楽しみ方。ミルキーなハマグリのエキスに甘辛なかえしが絡みます。

そして穴子。大振りの穴子が目の前で半分にカットされた時の音、立ち上がる湯気が、今でも目と耳から離れません。

最後は〆の蕎麦。もりorかけという選択に悩んだあげくもりをいただきました。みずみずしい二八そばは、喉越しが良く、噛めば爽やかな蕎麦の香りが広がります。おつゆは辛口で、蕎麦湯もありましたが、その前に飲み干してしまうほどの美味しさ。

魚介に野菜に、こちらで紹介できなかった品もふくめて天ぷら12品。良い頃合いを見計らって、どんどんと揚げたてを目の前に出してくれる、心地よい流れで、気づけばお腹いっぱいに。鈴木さんが静岡時代から長年お付き合いしてきた生産者さんの食材も多いため、1品1品の説明にも熱がこもり、楽しい晩餐となりました。

このまま10年20年と日本橋人形町の町に根付き、冒頭で名前を挙げた老舗と名を連ねて数えられるような、思わずそんな想像をしてしまう。何年も通ってみたくなるお店です。

蕎ノ字ソノジ

蕎ノ字

住所:
東京都中央区日本橋人形町2丁目-22-11
TEL:
03-5643-1566
営業時間:
11:45〜14:00(LO13:30)、17:30〜21:00 (LO20:00)
定休日:
月曜日、第二・第三日曜日
URL:
http://www.sonoji.info/

更新: 2017年3月8日

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