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編集部が訪れた美味しい名店『足跡レストラン』|龍口酒家|幡ヶ谷

編集部の足跡コメント

今回ご紹介する「チャイナハウス 龍口酒家」の創業は1983年。ちょうどこの頃は高級食材を使った上品なお味のホテル中華の全盛期。それとともに、周富徳氏が料理長を務めた 「聘珍樓」や、ヌーベルシノワの旗手・脇屋友詞氏がフレンチの石鍋裕氏とタッグを組んだ「トゥーランドット游仙境」などがオープンし話題を集めました。その真逆とも言える現地の食文化に倣い本場の味を提案する名店が生まれたのもこの時期で、吉祥寺「知味 竹爐山房」と「チャイナハウス 龍口酒家」がその代表格。ともに中国料理好きに長年愛され続けてきたお店です。

料理人歴50年を超える石橋幸さんが腕を振るう「龍口酒家」は、その食材や料理へのありあまる探究心と情熱からしばしば“変態中華”と呼ばれることがあります。鹿、猪に始まり、蛙に鳩にハクビシンまで、まさに「二本足は両親以外、四本足は机以外」という言葉が思い浮かぶほど、縦横無尽に繰り出される料理の数々。さらに中国産の蟻を白酒に漬けたお酒を始め自家製酒の数々・・・。しかし恐れることなかれ、総じて石橋さんのお人柄が現れているような、おおらかで穏やかな味付けによって、どれも食べやすく昇華された、優しい中国料理がいただけるのです。

「龍口酒家」にはドリンク以外のメニューはありません(ランチには麺・飯のセットやミニコースがあります)。全ておまかせで、「ストップ」の声をかけるまで料理が出続け、最後に〆の麺・飯のサジェスチョンがあるというシステム。今回は8品でおよそ1人5,000円弱と、量・質・価格ともにとても満足な食後感だったのです。

まず最初に出てきたのが前菜の盛り合わせ。もちろん全て手作り。大山鶏のローストは骨付きなだけに肉全体に旨みがまわってジューシー。霧島豚のチャーシューも八角などのスパイスの香りを纏っていながら、さらりといただける優しい味わい。きゅうりとトマトの酢漬けも、酸味が爽やかで、心地よい晩餐のスタートです。香菜たっぷりなところも嬉しい!

続いてはシャキシャキ感を残した絶妙な火入れの黄韮と自家製ベーコンの炒め物。こんなに豪快に黄韮が盛られた一皿は他のお店ではなかなかお目にかかれません。ベーコンの塩みによって、黄韮の甘みと淡い香りが引き立ちます。そしてもう一品は猪肉と蕾菜(つぼみな)。蕾菜とはザーサイの子どもで、コリっとした食感と清々しい苦みが特徴。弾力があり、野趣あふれる猪肉と一緒にいただけば、口の中で両者が調和。この料理をいただくと、野菜のえぐみでさえ大味で隠すことなく、美味しく食べさせてくれるところに石橋さんの確かな技術が垣間見れるのです。

そして下に炒ったゴマが敷かれたエビチリ。マイルドな餡がかかったぷりぷりのエビに、ゴマが香ばしさと甘みを加え、ネギの辛みが後を追いかけ、最後にぴりっとしたスパイスの刺激がでくすぐられる、味の重なりがなんとも楽しい一皿。もう1品はハマボウフウと金華ハムの炒め物。ハマボウフウ(浜防風)とは海岸の砂地に自生するセリ科の多年草。青っぽい心地よい苦みに、金華ハムの旨みが絡みます。

そして今回のメインは蝦夷鹿にカシューナッツをまぶした揚げ物。やわらかく、そしてくさみなく調理された蝦夷鹿は、噛みしめるほどに味わいが増してきます。添えられた香菜と花椒塩をつけると、香りの重なりとお肉の旨みが相まってなんとも言えない美味しさです。

麺飯の前にいただいたのが、こちらの美しいスープ「八宝湯」。透明なこのスープは見た目通りの澄んだ味わい。しかしながら、高麗人参、スッポン、ザーサイ、ニンニクなどをじっくり煮込み、キレのある後味ながらも複雑。かなりの手間がかかっていることが伺える、龍口酒家の名物です。

そしてもうひとつの名物がこちらの里麺(リーメン)。クロレラを練り込んだ緑の麺は、ツルツル。ゴマ油の風味と、チャーシューの旨みが絡んだ麺に食欲がそそられます。ここまでのお料理でけっこうお腹がいっぱいだったのですが、別腹のごとくぺろりといただけます。

コース全体を通じて感じるのは、薄めで上品な味付けの奥でイキイキと主張する、それぞれの食材たちの味わいや食感、香り。繊細に構築されたひと皿ひと皿に、自分でオーダーしたなら選ばないような食材が潜んでいることも「龍口酒家」の楽しみのひとつです。未だ見ぬ中国料理との出合いを求めて、石橋さんの采配に全面的に委ねてみてはいかがでしょう!

チャイナハウス 龍口酒家チャイナハウス ロンコウチュウチャ

チャイナハウス 龍口酒家

住所:
東京都渋谷区幡ケ谷1-3-1
幡ヶ谷ゴールデンセンター B1F
TEL:
03-5388-8178
営業時間:
11:00〜14:15、17:30~21:40LO
定休日:
月曜日

更新: 2017年3月1日

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