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未だ見ぬ、奥深い味と香りを求めて

|メキシコの風、吹く[20]|
第三章 メキシコの風が吹く店④
東京で最もメキシコに近い店「Tepito」

TEX-MEX、伝統的なメキシコ料理、そしてテキーラの風を追いかけてきましたが、まだまだ知らないことばかり。というわけで、本場の文化を伝えようと奮闘しているシェフのみなさんに各地の郷土料理や、名物料理をご紹介してもらいながら、メキシコのさらなる深淵へとご案内いたします。

愛する人への愛と理解から生まれた、メキシコの家庭の味

「料理は愛情」というけれど、大切な人を思って作る料理は格別に美味しいもの。ここ「テピート」では、そんな愛情たっぷりのメキシコの家庭料理が食べられます。オーナーの滝沢久美オロアルテさんの大切な人とは、旦那さんであるチューチョ・デ・メヒコさん。チューチョさんは“メキシコの至宝”とも称えられる、世界的に有名なメキシコ音楽のエンターテイナーです。「一流アーティストである彼は本物を愛する人。当然料理の味にも厳しいから、なんとか喜ばせたくてメキシコ料理を勉強したんですよ」。一番の師匠であるチューチョさんに聞きながら、現地のレストランの味を再現したり、メキシコ料理店のシェフに教わったり。若い頃から懐石料理に親しみ、茶事教室も主宰していた滝沢さんでしたが、スパイスを多用するメキシコ料理は日本料理と正反対。それだけに、目分量で美味しいメキシコ料理を作れるようになったときは、本当に嬉しかったのだそう。メキシコというと陽気なイメージを抱きがちですが、どこか影があるのがメキシコ人だと滝沢さん。「長年外国に支配され、虐げられた歴史を持つ人々にしか分からないものがある。それを理解しないと、メキシコ人とは結婚できません」と語る滝沢さんだからこそ、味だけではなく、心もメキシコに寄り添った本物の家庭の味が作れるのでしょう。「元々はチューチョが歌える場所をと作った店だったけれど、今はお客さんにメキシコの正しい文化を伝えて、楽しんでもらうことが私の喜びです」。

メキシコ料理に馴染みのないお客さんがタコスやファヒータを頼むと、「本物が食べたいなら、まずはこれ!」と半ば強制的にオーダー変更をすすめる滝沢さん。「うちは食べたいものが食べられない店なの(笑)」。それもこれも、お客さんを楽しませるための優しさ。食器類はすべて現地のものか、オリジナルであるのも滝沢さんの自慢。日本とメキシコの友好関係を願い、九谷焼の作家に特注した皿も(写真右)。

Tepitoでいただくメキシコの家庭料理あれこれ

タコス・デ・カルニータス
タコスというと屋台の食べ物と思われがちですが、家庭でもよく食べる料理。「日本でも、前日残ったお惣菜をアレンジして丼にしたりするでしょう。そんな感覚で、余った料理をトルティージャに載せて食べたりしますね」。もちろん、こちらは残り物アレンジにあらず。オレンジと自家製のラードで調理した、さっぱりとした味わいの豚肉(カルニータス、ミチョアカン州の名物料理)を手作りのトルティージャに載せて。900円。

ブエルボ・アラ・ビダ
直訳すると“生き返る”という意味の魚介のマリネ。よく知られる「セビーチェ」に似ているが、もっとお酢使いがマイルドで、名前通りフレッシュな味わい。メキシコ全土で食べられている。「テピート」では、滝沢さんのお気に入りであるメキシコシティの「フィッシャーズ」というレストランの味に近づけているそう。数種類の魚介を、お酢、塩、オレンジジュースなどで和える。ウスターソースが隠し味。1,160円

メチャド
ユカタン半島でマヤ時代から食べられていたとされる幻の料理。テレビ番組の依頼で再現することになったものの、チューチョさんはじめ周りに食べたことのある人がなく、ひと苦労。その後、味を知る大使館関係者のお墨付きをもらったのだとか。湯がいた豚肉をミキサーにかけた香味野菜、トマト、チキン、スパイス、塩、こしょうとともに煮込み、ライスを添える。滝沢さん曰く「カレーの原型では」。1300円。

テピート

TEL:03-3460-1077
住所:東京都世田谷区北沢3-19-9
営業時間:木・金・土18:00~22:30(L.O.22:00) 定休日 毎週日・月・火・水曜日

Text:唐澤理恵
Photo:加藤純平

※こちらの記事は2015年6月20日発行『メトロミニッツ』No.152に掲載された情報です。

更新: 2017年2月10日

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