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✈︎WORLD FOOD PORT. 「スイス発・シンプルでサスティナブルな食文化 Vol.3」

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WORLD FOOD PORT. |Switzerland|


スイスと聞いて一般的にすぐに思い浮かべるのは「ハイジ」「アルプス山脈」「永世中立国」といったところでしょうか。意外にもヨーロッパの他の国と比較すると日本ではまだまだ知られていないスイス。フードポート編集部は、この夏在日スイス大使館からのメディアツアーの招待を受け、奥の深いスイスを知ることができました。

さて、今回からは後半になります。前半は、なんとなくイメージがつくスイスのご紹介でしたが、ここからは少し意外なスイスをお届けできればと思います!

|熱帯植物園とキャビア養殖の融合|

スイスでキャビアが生産されているって、みなさんご存知でしたか? スイスを地図で見ると、もちろん海には面していないので、山のイメージが強いですよね。 そんなスイスでなぜキャビアが生産されているかという実情を知ると、何とも理に適っていて、驚きなのでした。 場所は、スイスの南ベルン州アルプスに位置するFrutigen(フルティゲン)という村にある「Tropenhaus」。 この施設は、熱帯植物園とキャビアの養殖場が一体になっており、さらにはその2つから生み出される食材を使用したメニューが提供されるレストランが併設されていました。

そもそも、なぜこの場所でキャビア養殖になったのかを、「Tropenhaus」のCEOであるMarcel Billods(マルセル・ビロッズ)氏に伺いました。 「実は、この村で6年前に鉄道を通すための新しいトンネル工事が始まった際に、18℃の温水が湧き出たんです。その際、18℃の温水を地元の川に流してしまうと魚たちが死んでしまい、自然環境が破壊されてしまうので、どうしたものかという議題があがったのです。様々なアイデアが出る中、18℃という温度が、チョウザメが生殖するのに最も適している常温だということがわかったのです」

その後の動きは早く、熱帯植物園との共存でチョウザメの養殖を行うプロジェクトが立ち上がり、熱帯植物園の屋根には太陽光パネルが設置され、水槽からはポンプで発電を行い、エネルギーもすべて循環する仕組みに整えられたそうです。そして、スキーシーズン以外の雇用を生み出すことにも貢献する結果となったのです。「熱帯植物園では、観賞用の植物の他に、パパイヤやバナナなどのレストラン用食材も育てるようになり、2014年度は3150㎏の果実を収穫できるようになりました。 そして、キャビア養殖としてのスタートは、まずロシアのシベリアからチョウザメの稚魚を輸入しました。有機の餌を与え1年で大きく育てあげ、メスかオスかの判別は超音波で行い、オスは食用に向け3年養殖し、レストランで提供するほか、養殖魚として全国に出荷もしています。反対にメスは、誕生から7年後にキャビアが取れるようになるので、長く大切に扱っており、2019年までには1.5トンのキャビア生産を目指しています」とのことでした。 実際に、「Tropenhaus」ではようやく輸入稚魚から成長したチョウザメよりキャビアが取れ始め、昨年は630㎏の生産量で、地元スイス人のお手土産として注目を浴びているとのことです。

そうこうお話しを伺いながら、こちらに併設のレストランでランチをご一緒にさせていただくことに。まずは、バケットとともに、この施設で誕生したキャビアが登場です。 「キャビアの味わいをもっとも感じる食べ方をご紹介しましょう。親指と人差し指の手の甲に置くんです。少し人肌で温めてから香りを楽しみ、そして味わってください」 とMarcel氏。実際にマネをして食してみましたが、普通に口にするよりも、一層口の中で香りが広がり塩分もまろやかで味わいが豊かに感じることができました。

続いて、植物園のパパイヤが使用されたサラダに、チョウザメがたっぷりと使用されたパスタがテーブルに。サラダは素材のフレッシュさがダイレクトに伝わり、柑橘のドレッシングがまた爽やかでバランスの良いおいしさでした。

そして、メインのチョウザメですが、しっかりと引き締まった白身の淡白な味わいの中にも旨みが凝縮されていて、若干価格が高めでありながらも地元の方にも人気というのが納得の味わいでした。山の国スイス産のキャビアってなんだか神秘的ですよね。 こちらの「Tropenhaus」、入館の際ガイドを申し込めば、チョウザメを見たり触ったりも可能とのことですので、足を運ばれる際にはぜひチャレンジを。

|アクアカルチャーの都市未来型農業|

次にご紹介するのは、若き経営者がBasel(バーゼル)の街で2010年に立ち上げた、ベンチャー企業「Urben Farmers」です。こちらもいわゆるエネルギー循環系の未来型農業を展開中で、今後のグローバルに向けたビジネス発展が楽しみな企業でした。

まずは、完全有機の水耕栽培にて野菜を育て、その水を再利用して魚(テラピア)を養殖するスタイルという点では、上記の「Tropenhaus」の運用方法と少し似ているかもしれません。ただ圧倒的に違うのは、こちらのビジネスモデルは都市型という点です。 都市のビルの屋上にビニールハウスを建て、天候コントロールができ、水力により自家発電も行うアクアカルチャーとして、野菜も魚も育てようという考え方を提唱しています。

更新: 2016年8月16日

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